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インプラント手術後には、さまざまな注意点があります。そのなかには、入浴に関する注意も含まれます。「湯船に浸からないと疲れが取れる気がしない」「シャワーだけでは物足りない」など、毎日の入浴を楽しみにしている方も多いかもしれません。ただ、術後の入浴は、治療の経過にも影響を与える可能性があるので、留意してください。
インプラント手術後の入浴による患部への影響については、さまざまなことが考えられます。しかし、インプラント手術の患部は口腔内のため、お湯に直接触れることはありません。つまり、お湯などに傷口が触れる、洗うときに傷口に触れる、というシーンではないのです。では、入浴がどのようにしてインプラント手術後の傷口に影響を及ぼすのでしょうか。
通常の外科手術で入浴が問題になるのは、傷口が水分に触れる、洗うときに擦ってしまうなどのことがあげられます。しかし、インプラント手術後の傷口は、口腔内なので、問題となるのは身体が温められて血流が促進することにあります。インプラント手術の直後は、手術部位が侵襲(メスなどで切られて傷を負った状態)されたことで、身体の免疫機構が働きます。そのため、炎症反応が起こり、腫れや痛みが出ることがあります。入浴による、血行の促進は、この腫れや痛みを増強してしまう可能性があるのです。
では、なぜ、血行が良くなると腫れや痛みが増強する可能性が高いのでしょうか。私達の通常生活では、血流を良くすることは健康につながるというイメージがあります。この問題のキーワードは炎症反応にあります。前述のようにインプラント手術後の部位は、手術侵襲により炎症反応を起こしています。炎症している周囲では、血管が拡張されて血流が増加し、白血球や免疫物質などが血管から組織へと移行しています。この現象により、身体は腫れや痛み、時には発熱などが出現するのです。この炎症反応は侵襲された細胞を排除して正常細胞に戻すためのものですから、侵襲が小さいインプラント手術ではそれほど重度ではないと考えられます。しかし、入浴などで、血行が促進された場合はどうでしょう。血管の拡張がより促進されて、炎症反応が強く出てしまうことが考えられるのです。そのため、一時的ではありますが、痛みが強くなったり、腫れがひどくなったりする可能性があります。
入浴のタイミングについては、ドクターにより違いがあるでしょう。それは、個人によって症状も違いますし、手術方法も違っているので、当然のことです。歯肉を切開しないフラップレス手術であれば、手術侵襲は少なくてすみますので、入浴のタイミングは早くなるでしょう。逆に骨の量が足りないために、歯肉を大きく切開する手術を受けた場合には、入浴のタイミングは少し遅くなるかもしれません。平均的に考えれば、お湯に浸かるタイミングは手術後2日程度あけたほうが良いでしょう。ただし、シャワーは手術翌日から許可されることが多いようです。
ご紹介してきたように、インプラント後の入浴は炎症反応を高めてしまう可能性があります。そのため、入浴指示は必ず守るようにしてください。担当医は、手術内容、そして、患者さんの健康状態なども考慮して注意事項を設定しています。疑問点などがあれば、質問をして、納得の上で治療を受けるようにしましょう。